迷信に翻弄された丙午、60年ぶりの巡り合わせが告げる新たな時代
丙午(ひのえうま)という巡り合わせは、古代中国に端を発する十干十二支の組み合わせによって定まる。十干の「丙(ひのえ)」は太陽や燃え盛る炎を象徴する陽の火であり、十二支の「午(うま)」もまた季節で言えば真夏、時間で言えば正午を指す陽の火に分類される。すなわち、陰陽五行説において火と火が重なり合う、極めてエネルギーの純度が高い極陽の年と定義されてきた。
この強大な火の力は、本来であれば生命力や情熱、物事を焼き尽くして新しく再生させる吉兆としても解釈できたはずだった。しかし、日本民俗学の研究が示すように、中世から近世へと移行する過程で、この性質は次第に「激しすぎて周囲を破滅させる」「女性が生まれると気性が荒くなり夫を食い殺す」という歪んだ俗信へと変容していった。自然への畏怖がいつしか特定の年に生まれる人間への偏見へとすり替えられた歴史の暗部である。