戦慄の音響演出『ぞうのあしおと係』伝説の監督が明かす制作秘話
映画館の巨大なスピーカーシステムではなく、個人のスマートデバイスやヘッドホン環境でどこまで人間の恐怖心理を揺さぶれるか。本作が仕掛けた挑戦は、従来のサスペンス・スリラーの概念を根底から破砕した。視覚的な流血や怪物はおろか、劇中の大半はごく普通の室内で進行する。しかし、ひとたび足音が聞こえ始めると空気は一変する。サイコロジカルホラーの真骨頂は、観客自身の想像力を暴走させる点にあるが、本作はそのトリガーとして「音」を徹底的に利用した。
かつての映画産業において、サウンドデザインは映像を補助する裏方に過ぎなかった。だが、本作の登場によって音響効果業界の地位と評価は決定的な転換点を迎えている。静寂そのものを「音」として配置し、無音の数秒間に人間の心拍数を跳ね上げる演出手法は、海外の映像メディアでも「前代未聞の音響的脅威」と大々的に報じられた。