極限の安置所で何が起きたのか 遺体収容と検視に命を捧げた記録
石井光太の原作を基に映像化されたのが、君塚良一監督による映画『遺体 明日への十日間』だ。劇映画という形式をとりながらも、徹底したリアリズムと抑制された演出で安置所の10日間を描き切った。
主演を務めた名優・西田敏行は、かつて納棺の技術を身につけていた民生委員の相羽役を魂を込めて熱演した。混乱する安置所で、相羽は運ばれてくる遺体に「寒かったろう」「もう大丈夫だからね」と優しく語りかけ、硬直した体をほぐして生前の姿に近づけていく。その手つきと温かな眼差しは、尊厳を失いかけた現場に静かな希望の光を灯した。
西田自身、東北(福島県)にルーツを持つ俳優として、被災者への底知れぬ哀悼を胸に撮影に臨んだという。派手な劇的効果を排し、死者への礼節と生者の悲哀を静謐に描き出したこの映画は、災害時における「死の看取り」の重みを広く社会に問いかける契機となった。