豪商が競った防火壁の真実!うだつの上がる町並みを歩く極上旅
「卯建(うだつ)」の起源は、隣家からの延焼を防ぐために屋根の両端に設けられた土造りの防火壁にさかのぼる。木造建築が密集する江戸時代の城下町や商業地において、火事は財産を一瞬で灰に変える最大の脅威だった。初期の卯建は極めて実用的な設備に過ぎなかった。
風向きが変わったのは江戸中期以降だ。経済の主役に躍り出た商人たちは、防火壁に意匠を凝らし始めた。本瓦を幾重にも葺き重ね、家紋をあしらった鬼瓦を据え、破風に優美な曲線を施す。その設置には現代の貨幣価値で数千万円相当の費用がかかったとされる。財力のない家には到底建てられない。こうして「卯建を上げる」行為は、商戦を勝ち抜いた富裕層のみに許された無言の自己主張となった。
見上げるほど高く、誇らしげに突き出た卯建の列。それは互いの商才を競い合い、町全体の格式を高め合った豪商たちの生きた証拠である。