巨大財閥を操った影の本社:三菱合資会社が遺した覇権と解体の真実
三菱合資会社は近代日本の経済覇権をどう握ったのか。その内幕を解き明かす鍵は、驚くほど緻密に設計されたピラミッド型の組織統編にある。中枢たる合資会社は各事業会社の発行株式をほぼ独占し、人事権と資金配分権を完全に掌握していた。傘下の各社には徹底した独立採算を求めつつ、全体の戦略は本社役員会が一元的にコントロールする。現代の巨大コングロマリットが実践するポートフォリオ経営の原型が、百年前の丸の内で完璧に機能していた。
とりわけ強力だったのが、持株会社・総合商社の有機的な連携だ。三菱商事が世界中から原料を調達し、三菱重工業が製品を製造、三菱銀行が資金を融通し、東京海上火災保険がリスクをヘッジする。この完結型のエコシステムは、海外市場での熾烈な競争において圧倒的な破壊力を発揮した。国家の政策目標と自社の利益を冷徹な計算の上で一致させ、官民一体となって市場を寡占していく手法は、欧米列強を戦慄させた。