巨岩と原生林に神を見る山神社、歴史の深淵と神秘のご利益に迫る
そびえ立つ険峰を神そのものとみなす山岳信仰は、日本列島の風土が生んだもっとも純度の高い信仰形態の一つだ。縄文時代より、森や山は豊かな恵みをもたらす母体であると同時に、容赦ない土砂崩れや噴火を引き起こす荒ぶる神の居所でもあった。人々は山頂に雷神や水神を見出し、結界を設けて立ち入りを制限した。
この素朴なアニミズムを体系化し、過酷な身体技法へと昇華させたのが修験道である。飛鳥時代の呪術者である役小角(えんのおづぬ)が開祖とされ、吉野から大峯山へと続く険路を駆ける山伏たちの姿は、今なお山林修行の生きた化石として息づいている。平安初期に真言密教をもたらした空海もまた、高野山の深山に分け入り、大自然の懐で宇宙の真理を体得しようとした。山とは、異界であり、死と再生を擬似体験する変容の空間だったのだ。