2026年、焼き鳥は「極上のガストロノミー」へ。紀州備長炭の伝統とイノベーションが生む炭火焼きの現在地
電気やガスでの調理と、炭火焼きの間には圧倒的な「壁」が存在する。その根底にあるのが、遠赤外線と近赤外線の熱放射エネルギーだ。ガス火は燃焼時に大量の水蒸気を発生させるため、肉の表面が水分を帯びてべたつきやすい。一方、高品質な白炭が放つ熱は水分を含まず、肉の表面を瞬時に焼き固めて旨味成分であるイノシン酸やアミノ酸を閉じ込める。
「表面はパリッと香ばしく、中は驚くほどジューシー」。言葉で言うのは簡単だが、これを実現するには炭の爆ぜ(はぜ)具合や火床の温度勾配を完璧に読み切る感覚が欠かせない。職人は毎朝、炭の配置を変え、団扇(うちわ)一本で空気の通り道を微調整する。近年のフードサイエンス研究でも、炭火がもたらす高い放射熱率が鶏肉のアミノ化反応(メイラード反応)を最も理想的な速度で進行させることが数値データとして証明された。