「五番街のマリーへ」歌詞に隠された切ない真実と高橋真梨子の美声
「五番街のマリーへ」という楽曲が、半世紀にわたり人の心を惹きつけて止まない最大の理由は、異国の哀愁を鮮烈に描き出すドラマチックな世界観にある。しかし、その甘美な旋律の奥底に横たわる「切ない真実」にどれほどの人が気づいているだろうか。遠く離れた街「五番街」に暮らすかつての恋人・マリー。主人公は現地を訪れる友人に伝言を託す――「もし彼女が幸せに暮らしているなら、僕の近況を伝えてほしい。だが、もし彼女が落ちぶれて哀しい暮らしをしているなら、何も言わずに立ち去ってくれ」と。
この繊細で残酷なまでの心理描写に命を吹き込むのが、ヴォーカルを務めた高橋真梨子(当時は高橋まり)の唯一無二の歌声だ。低音部に宿るハスキーな哀愁と、サビで一気に解き放たれる透明感。彼女は単にメロディを歌うのではなく、マリーの幸せを祈りながらも自らの傷つきを恐れる男のエゴと優しさを、吐息交じりの表現で見事に歌い上げる。自分が去った後のマリーの情景を思い浮かべる男の切ない選択こそが、聴き手の胸を強く締め付ける真実のドラマなのである。