『アッツ島玉砕』に秘められた真実―藤田嗣治の苦悩と暗号を解く
画面全体を支配する暗褐色のトーンは、藤田がルーブル美術館で貪るように学んだジェリコーの『メデューズ号の筏』やドラクロワの歴史画を彷彿とさせる。単なる泥の色のようでいて、そこには複雑に重ねられた絵の具の層が存在する。
光の当て方にも卓越した計算が働く。画面上部から薄っすらと差し込む光は、救済の光か、それとも冷酷な自然の無情さか。兵士たちの手や足が交錯する対角線の配置は、観る者の視線を画面の奥へ奥へと引きずり込む。死闘という混沌としたテーマを、完璧な古典的構図によって制御する。この極限の対立構造こそが、観る者に息をのむような美しさと戦栗を同時に抱かせる要因である。