八つ墓村にスケキヨはいない?国民的勘違いの真相と怪奇の系譜
犬神佐清(スケキヨ)という特異なキャラクターは、1976年に公開された市川崑監督の映画『犬神家の一族』によって永遠の命を得た。信州の製薬王・犬神佐兵衛が遺した莫大な遺産と異様な遺言状を巡り、血で血を洗う連続殺人が幕を開ける。
ビルマ戦線で顔に重傷を負い、素顔を隠すために母・松子から与えられた白い密着ゴムマスク。無表情であるがゆえに底知れぬ狂気と悲哀を漂わせるその造形は、東宝配給のもと角川映画の記念すべき第1作として世に放たれ、日本映画の歴史を塗り替えるビジュアルショックをもたらした。
湖水に突き刺さるV字の足、菊人形の首すげ替え殺人など、市川崑監督によるスタイリッシュかつ陰影に満ちた映像美は、観客の網膜に焼き付いて離れない。この鮮烈すぎるインパクトこそが、のちに他作品の記憶すら侵食する元凶となった。