被告と被告人の違いとは?民事と刑事の決定的な差と報道のカラクリ
法律上は「被告人」であるはずの刑事裁判の当事者が、テレビや新聞では一貫して「〇〇被告」と報じられる。この食い違いに疑問を抱いた経験を持つ読者は少なくないはずだ。
この報道慣例の発端は、1989年に日本新聞協会が策定した表記方針にある。元々は「被告人」という語が持つ響きが生々しく、強い犯罪者イメージを想起させやすいという配慮や、活字の文字数制限、呼びやすさといった実務上の要請から、「刑事の被告人もマスコミ報道では一律に『被告』と呼ぶ」という運用が定着した。
しかし、この慣例こそが民事の「被告」と刑事の「被告人」の混同を一般に広げてしまった元凶とも言える。近年では法廷を舞台にした人気ドラマ『イチケイのカラス』などの影響で、裁判官や弁護士が法廷内で「被告人」と呼びかける描写が広く浸透し、一般層の間でも報道の呼称に対する違和感が顕在化するようになった。
弁護士ドットコムをはじめとする専門メディアや法曹関係者からも、「報道用語としての『被告』表記は推定無罪の原則を曖昧にし、民事の被告に対する偏見を生む」といった批判や改善要求が根強く提起され続けている。事実を正確に伝えるべき報道機関が、法的定義を崩してまで呼称を一本化し続けることへの疑問符は、年々大きくなっている。