本の街に迫る地殻変動:神田神保町の再開発と激変する老舗カルチャー
神田神保町の輪郭を形作っているのは、古書店だけではない。白山通りを少し南下した一ツ橋エリアには、小学館や集英社といった日本を代表する総合出版社が巨大な拠点を構える。さらに街の中央には、日本の近現代思想を牽引してきた岩波書店が重厚な存在感を放つ。
出版・書籍流通業界全体が紙からデジタルへの構造転換にあえぐなか、神保町は「情報の発信基地」と「知識の最終処分場・アーカイブ」という二面性を併せ持ち続けてきた。新刊が刷られ、流通し、やがて時代を経て古書店の棚に収まる。この循環システムが、わずか数百メートル四方のエリアで完結しているのだ。
近年では大手出版社が仕掛ける電子コミックの爆発的ヒットと並行して、神保町周辺では少部数発行のZINE(自主制作誌)やリトルプレスを専門に扱う独立系書店が急増している。メガヒット主導のマスビジネスと、極限までパーソナライズされた偏愛カルチャー。その両極が互いに刺激を与え合いながら共存している点に、この街の底知れないタフネスがある。