天下人を沈黙させた一輪の力:世界を魅了する生け花変遷の真実
安土桃山時代、花の美は政治の最高峰で火花を散らす。天下人・豊臣秀吉が権勢を誇示するために豪華絢爛な大名文化を創出する一方、美の領域では張り詰めた心理戦が繰り広げられていた。茶の湯を大成した千利休が「花は野にあるように」と最小限の命を掬い取ったのに対し、池坊の初代・二代池坊専好は、圧倒的な空間構成力で武将たちの度肝を抜いた。
前田利家の邸宅で、秀吉の前に立てられた専好の大砂物。幅七メートル余りの巨大な松が魅せた雄渾な佇まいは、暴走する権力者に対する静かなる諫言だったとも伝えられる。この手に汗握る芸術的対決は、のちに映画『花戦さ』として映像化され、現在もNHKオンデマンドなどで多くの歴史・芸術ファンを惹きつけてやまない。権力に屈せぬ美の力は、この時代に不動の地位を確立した。