車寅次郎の未公開フィルム発見!最新リマスター配信が放つ熱気
『男はつらいよ』シリーズを国民的長寿映画へと押し上げた立役者は、言うまでもなく山田洋次監督の冷徹なまでの観察眼とヒューマニズムだ。山田監督が描いたのは、絵空事のユートピアではない。貧しさや世間体、小さな嘘から生じる家族内の衝突といった、生々しい庶民の日常を土台に据えたからこそ、その中に宿る情愛が胸を打つ。
そして、奔放な兄を時に叱り、時に涙ながらに受け止める妹・さくらを演じた倍賞千恵子の存在なくして、この世界観は成立し得なかった。倍賞千恵子が放つ凜とした佇まいと温かさは、帰る家を持たない放浪者の永遠の港であり、観客にとっても絶対的な心の安全地帯であり続けたのである。