毒舌の奥にある人間味、松任谷由実の本当の性格と知られざる素顔
八王子の老舗呉服店に生まれ、少女時代から自由奔放な感性を育んだ彼女は、10代で荒井由実としてデビューを果たした。『ひこうき雲』の瑞々しくもどこか醒めた死生観は、当時のフォークソング全盛期に決定的な亀裂を入れ、日本の音楽シーンにニューミュージックという新たな地平を切り拓くことになる。
若くして浴びた熱狂と、結婚を機に松任谷由実へと改名した際のプレッシャー。彼女を形作ったのは、恵まれた才能以上に、自らを客観視し続ける残酷なまでのリアリズムだった。感情に溺れず、常に一歩引いた視点から自分自身をプロデュースする姿勢は、周囲から「冷徹」「ドライ」と受け取られることも少なくなかった。
しかし、その冷静さこそが時代の波に呑まれない防波堤となった。流行を追うのではなく、時代が求めている欲望の形を冷徹に見極める目線。感性だけで突っ走ることを自らに禁じ、緻密な構築美を追い求める完璧主義こそが、彼女のクリエイティビティの根底に横たわっている。