古都・奈良市の知られざる素顔へ!名刹と隠れ家を歩く独自ルポ
中心街の喧騒から少し離れた西ノ京エリアに佇む唐招提寺は、歴史文化観光の真髄を味わえる特別な場所だ。失明という過酷な苦難と幾多の難破を乗り越え、正しい仏教の戒律を伝えるために来日した唐の高僧・鑑真和上。彼が私寺として開いたこの寺には、派手な装飾を排した簡素で力強い美が満ちている。
金堂に並ぶ列柱を見上げると、ギリシャのパルテノン神殿を思わせるエンタシス(中央の膨らみ)の技法が遠くシルクロードを経てこの地に到達した事実を思い起こさせる。鑑真がもたらしたのは単なる教義にとどまらず、薬草の知識や建築、彫刻技術にまで及ぶ。海を渡ったひとりの僧の不屈の情熱が、今なお苔むした静謐な境内に息づいている。