黒沢清や周防正行を支える映画編集技師・香川知子の独自の眼差し
映画編集とは、単に不要な部分を切り落とす作業ではない。役者の視線の揺らぎ、沈黙の重さ、背景を流れる風の速度までを計算に入れ、時間の流れそのものを再構築する過酷なクリエイティブワークだ。香川知子は、フィルム時代から第一線でその技術を磨き上げ、デジタルシフトを経た現在に至るまで、日本映画編集協会の重鎮としても業界の規範を示し続けている。
彼女の編集スタイルは、極めてストイックでありながら驚くほど柔軟だ。現場の熱狂から一歩距離を置き、素材そのものが放つ声に耳を澄ませる。監督が現場で抱いた先入観を解き放ち、もっとも純度の高いドラマを抽出するその手腕は、数々の気鋭監督たちを虜にしてきた。