劇伴界を揺るがす孤高の弓筋。チェリスト林田順平が明かす制作秘話
赤ランプが点灯し、無音の緊張が支配するスタジオ・レコーディングの現場。そこは妥協が一切許されない戦場だ。クリック音に合わせて譜面を追いながら、ミリ単位の弓の角度、指先の圧力で音色をコントロールしていく。歌声を持たないインストゥルメンタルだからこそ、一音の掠れや息遣いそのものが登場人物の心理描写となる。
発売されたサウンドトラックをじっくり聴き込むと、オーケストラの分厚いテクスチャーの隙間から、艶やかなチェロのラインがくっきりと浮かび上がってくる。旋律を美しく歌い上げるだけでなく、時に弦を激しく叩き、軋むようなノイズさえも音楽的なテクスチャーへと昇華させる。その柔軟なアプローチが、映画やドラマの劇中音楽に類稀な陰影とリアリティを与えている。