まっくろくろすけの正体とは?トトロと千と千尋を結ぶ裏設定を考察
劇中でサツキとメイが「まっくろくろすけ出ておいで」と口ずさみ、手で捕まえようとしたあの黒い物体。作中でおばあちゃんが「ススワタリ」と呼ぶように、彼らの正体は古い家や誰も住んでいない暗がりに棲みつく煤の精霊のような存在だ。スタジオジブリの公式設定や伝承的な背景においても、人間に害をなす妖怪ではなく、家を見守る大自然の余白のような存在として描かれている。
興味深いのは、映画『となりのトトロ』と『千と千尋の神隠し』における描かれ方の違いだ。トトロに登場するススワタリは、人間が住み始めて家の中に明るい笑い声が響くと、夜のうちに別の静寂を求めて山奥や天井の隙間へと引っ越していく。野生の性質を残した無邪気な存在だ。一方で『千と千尋の神隠し』に登場するススワタリは、ボイラー室で釜爺の手足となり、石炭を運ぶ労働に従事している。魔法で仕事を与えられ、金平糖を餌としてもらう姿は、現実世界における社会システムや労働の寓意すら感じさせる。
同じ「ススワタリ」でありながら、トトロの自然豊かな昭和の田園風景と、千と千尋の異界の油屋という舞台設定の違いが、彼らの存在様態に鮮やかな変化を与えている。この緩やかな作品間の繋がりこそが、ファンを魅了し続けるジブリワールドの奥深さと言えるだろう。