名門の宿命を超えて覚醒する俳優・佐藤寛一郎の深層と現在地
日本映画史にその名を刻む怪優・三國連太郎、そして今なお第一線で重厚な存在感を放ち続ける父・佐藤浩市。この巨大すぎるふたつの巨星の血を引くという事実は、表現の世界においてどれほどの重圧をもたらすのか。常人であれば押し潰されかねないその看板を、彼は決して隠すことも、かといって安易に寄りかかることもしない。
かつては役者の道を意識的に避けていた時期もあったという。だが、血の導きか、あるいは抗えぬ表現への渇望か。彼がカメラの前に立つことを選んだとき、そこにあったのは七光りへの甘えなど微塵もない、剥き出しの闘争心だった。偉大な先達と比べられる運命をあらかじめ呑み込み、自らの足で荒野を歩む決意が、その骨太な芝居の根底に流れている。