「怒涛の展開」は誤用か?激動の時代を映し出す言葉の正体と真実
言葉の移ろいを定点観測し続ける日本語学・辞書学の領域でも、この語の変遷は興味深いトピックとして扱われてきた。三省堂の辞書編纂者として知られる飯間浩明氏は、街頭の看板やメディアの用例から言葉の生きた生態を採集し、現代日本語の動態を分析し続けている。辞書の世界において、比喩的用法が主義的な意味を侵食していく過程は珍しくないが、「怒涛」の広がりはその典型例といえる。
文化庁が定期的に実施する国語に関する世論調査でも、伝統的な語義と現代的な慣用表現との間にある認識のズレが度々議論に上る。荒れ狂う波という具象から、息つく暇もないスピード感という抽象概念へのシフト。それは、短時間で大量の情報を処理しなければならない現代人の時間感覚が、言語の側を引っ張り、再定義を迫った結果とも解釈できる。