『千と千尋の神隠し』謎の「にがだんご」効能とハク・カオナシ救出劇
なぜ「にがだんご」は、ハクとカオナシという異なる二つの存在を救うことができたのか。その裏には、ジブリが描き続けてきた「浄化」というテーマが深く関わっている。
湯婆婆の命を受け、銭婆から契約の印章を盗み出したハクは、体内に仕込まれていた黒い虫(支配の呪い)によって吐血し、死の淵をさまよっていた。千尋は迷わず「にがだんご」を半分に割り、ハクの口へと押し込む。すると、ハクは凄まじい吐瀉とともに腹の中の呪いを全て吐き出し、本来の龍(神)としての自我を取り戻した。薬の力は病を治すのではなく、精神と体を汚染していた「外部からの害悪」を体外へ追い出す触媒となったのだ。
一方、油屋の金品や従業員を飲み込み、肥大化・凶暴化したカオナシにも、千尋は残りの「にがだんご」を食べさせた。カオナシは苦しみに悶えながら、飲んだ人間やご馳走、そして己の中に蓄積されたドロドロとした欲望を怒涛の勢いで吐き出し始める。油屋という欲望の街で肥大化した偽りの自分を削ぎ落とし、素朴で静かな元の姿へと戻る過程は、まさに物理的・精神的な「脱構築」のプロセスだったと言える。