ライヘンバッハの滝で何が起きた?ホームズ死亡の真相と生還トリック
読者からの凄まじい復帰要求と巨額の原稿料提示を受け、ドイルは1903年、短編『空き家の冒険』で見事な復活劇を執筆します。作中でホームズは、驚愕のあまり気絶したワトスンの前に現れ、あの運命の日に起きた真実を語り始めました。
明かされた転落の真相は、実にスリリングなものでした。モリアーティ教授と組み合った際、ホームズは「バリツ(Baritsu)」と呼ばれる日本の格闘術の心得があったため、教授の締め技をすり抜けることに成功。バランスを崩した教授だけが滝壺へと真っ逆さまに落ちていったのです。
長年「謎の格闘技」とされてきたこの「バリツ」ですが、現代の研究では、19世紀末にイギリス人技術者エドワード・ウィリアム・バートン=ライトが日本柔術やボクシング、ステッキ術を統合して創始した護身術「バティツ(Bartitsu)」の誤植、またはドイルによる意図的な造語であったことが判明しています。当時ロンドンで流行していた最新の格闘技が、ホームズの命を救う鍵として作中に組み込まれていたわけです。
さらにホームズは、生き残ったモリアーティ一味の腹心・モラン大佐の報復を避けるため、崖の上に身を潜め、そのままチベットや中東を巡る数年間の潜伏生活(シャーロキアンが呼ぶ「大空白時代(グレート・ハイエイタス)」)へと旅立ったのでした。