「世界一醜い魚」は誤解だった?水圧が明かす深海生物の真実と謎
なぜこれほどまでに姿が変わってしまうのか。その答えは、彼らが暮らす深海と地上との凄まじい環境差にある。
彼らが生きる水深千メートル付近は、地上のおよそ100倍という猛烈な水圧が常にかかる世界だ。通常の魚が持つような硬い骨格や浮袋を持っていれば、強烈な圧力で押し潰されてしまう。そのため、彼らの体組織の大半は水とほぼ同じ密度のゼラチン質で構成されている。浮袋を持たずとも、この柔軟な肉体そのものが天然の浮き袋として機能し、無駄なエネルギーを使わずに水中を漂うことができる仕組みだ。
しかし、探査船の網によって一気に水面に引き揚げられると、抑え込まれていた体内の圧力が急激に解放される。減圧によって皮膚や筋肉のゼラチン質が収縮力を失って崩壊し、あの独特な「ドロドロとした顔」へと変わってしまう。つまり私たちが目にする醜い姿は、死によって肉体構造が保てなくなった「悲劇の姿」に過ぎないのだ。