渋沢栄一の大河ドラマ『青天を衝け』吉沢亮が宿した魂と史実の真相
従来の歴史ドラマにおいて、経済人を主役に据える試みは極めてハードルが高いとされてきた。合戦や政治闘争のような派手なスペクタクルに比べ、制度設計や資金調達の駆け引きは映像化が難しいからだ。その前評判を痛快に裏切ったのが、主演・吉沢亮の鬼気迫る表現力だった。
大森美香の手掛けた脚本は、渋沢栄一を聖人君子として描くことを徹底して拒んだ。感情を剥き出しにし、時に挫折し、理不尽な世の中に怒りの声を上げる「おかしれぇ(面白い)」人間としての本質。吉沢亮は、泥にまみれて藍作に励む血気盛んな青年期から、数千に及ぶ近代化プロジェクトを牽引した老境に至るまで、声色と眼光のグラデーションを緻密に使い分け、希代の実業家へ命を吹き込んだ。