市川染五郎と父・松本幸四郎の知られざる絆と高麗屋に息づく芸の真髄
父子の競演は劇場の枠を飛び越え、映像の世界でも結実した。本格時代劇『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』において、松本幸四郎が演じる主人公・長谷川平蔵の若き日「長谷川銕三郎」を市川染五郎が演じたキャスティングは、映像界にも強烈なインパクトを残した。
同一人物の「現在」と「過去」を実の親子が演じ分ける試みは、骨格や声のトーン、醸し出す哀愁の共通性があって初めて成立する奇跡的な配役だった。若き日の無鉄砲さと、成熟した男の包容力。染五郎は父の芝居を徹底的に観察しつつも、単なる模倣に留まらない青年の剥き出しの情熱を画面に焼き付けた。