【特報】銀幕のミューズ・水野久美の解体新書:怪獣特撮の女王が現代の世界映画界を魅了し続ける理由
多くの海外ファンにとって彼女は「特撮映画の女王」として記憶されているが、そのキャリアの神髄はきわめて広大だ。劇団俳優座の養成所を経て映画界入りした経歴が物語る通り、その演技の根底には新劇仕込みの確固たる基礎と柔軟な表現力が脈打っている。
黒澤明監督の『椿三十郎』や成瀬巳喜男監督の『女の座』をはじめ、昭和の巨匠たちが手がけた文芸作品や社会派ドラマで見せた佇まいは、特撮映画での絢爛な美しさとは一味違う、しなやかで生活感のある人間の深みを漂わせる。大衆娯楽の娯楽性と、文芸映画の芸術性。その双方を縦横無尽に行き来できる比類なき振れ幅こそが、女優としての真の骨格であった。