未踏の巨峰に消えた中島健郎の軌跡と関係者が明かす未公開記録
巨峰の頂を幾度も極めながら、中島は何を思い、いかなる葛藤を抱えていたのか。近年、所属先であった石井スポーツのスタッフや日本山岳会の遠征関係者、そして苦楽を共にした撮影クルーの証言によって、これまで公にされてこなかった数々の未公開記録が明らかになりつつある。
テント内で深夜に吹き荒れるブリザードの中、凍りつく指先で書き留められたフィールドノートには、カメラマンとクライマーという二つの役割の間で揺れ動く苦悩が克明に綴られていた。「登るために撮るのか、撮るために登るのか」。極限の寒気と低酸素環境で機材トラブルと戦いながら、自らの命を削ってまでレンズを覗き続けた動機。関係者が語るエピソードは、決して華やかな成功談だけではなく、恐怖に押し潰されそうになりながらも一歩前へ踏み出す、生身の人間の壮絶なリアリズムに満ちている。