消された人生と命の対価、証人保護の極秘現場と日本導入の真相
1970年、アメリカの組織犯罪対策は歴史的な転換点を迎えた。マフィアの血の掟「オメルタ(沈黙の戒律)」を打ち破るべく、アメリカ合衆国司法省の敏腕検察官ジェラルド・シュアが主導して考案したのが、連邦証人保護プログラム(通称WITSEC)である。
アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画『イレイザー』や、犯罪史の金字塔『グッドフェローズ』など、数多のクライム・サスペンス作品がこの制度をエンターテインメントとして消費してきた。NetflixやHBOのドキュメンタリーでも度々特集が組まれるが、劇的なハイテクアクションと現実の運用現場には決定的な乖離が存在する。
ジェラルド・シュアが設計したシステムの根幹は極めて泥臭い。それは「対象者を物理的かつ社会的にこの世から消し去ること」に尽きる。創設以来、数千人以上の証人とその家族が別人に生まれ変わったが、規則を遵守した証人が組織に殺害された事例は一件も報告されていないという驚異的な防衛実績を誇る。