「新幹線の顔」はなぜ伸びた?空気抵抗と微気圧波を制する造形美の謎
丸みを帯びた愛らしい初代0系から、カモノハシのような異彩を放つ700系、そして鋭角的なエッジをまとった現代の車両へ。新幹線の先頭形状が時代とともに引き延ばされてきた最大の理由は、過酷な物理現象との闘いにある。
列車が時速300キロ以上の猛スピードで狭いトンネルに突入した瞬間、前方の空気が強烈に押しつぶされ、衝撃波となって反対側の出口へ伝わる。これがトンネル出口周辺で「ドーン」という轟音を響かせる「トンネル微気圧波」現象だ。沿線住民の生活環境を守るため、騒音を極限まで抑えることこそが開発陣に課された至上命令だった。
この難解な流体力学の課題に対し、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)や東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の研究者たちは膨大な風洞実験とシミュレーションを繰り返した。例えば、東海道・山陽新幹線の最先端を走るN700S系新幹線では、「デュアルスプリームウィング形」と呼ばれる複雑な曲面を採用。風の通り道を最適化することで、空気抵抗を大幅に減らしつつ走行時の揺れや騒音をシャットアウトすることに成功している。