一心不乱にお茶漬けを啜る男・松村雅史の伝説Cmと驚きの現在
一夜にして日本中の食欲を支配した松村雅史だが、その後の足取りについては長年多くの謎に包まれてきた。大ヒットCMの顔となったことでバラエティ番組や民放ドラマからのオファーが相次いだが、彼は安易なタレント化の波に乗ることを選ばなかった。
取材を進めると、彼はスポットライトの眩しい商業メディアの中心から一歩距離を置き、自身の原点である舞台芸術やインディペンデントな表現活動、さらには後進の育成や制作の裏方を支える現場へと活動の軸足を移していたことがわかる。表舞台での露出が絞られたことで「あの人は今どうしているのか」という都市伝説的な関心は高まり続けたが、本人は一貫して地に足のついた表現者としてのキャリアを全うしてきた。
過度な自己顕示を好まず、職人的なスタンスを保ち続けたからこそ、あのCMで放った「無名の男のリアル」という神秘性が損なわれることはなかった。消費され尽くすことを拒んだ表現者の矜持が、作品を不朽の名作へと昇華させたと言える。