映画『幸せの鐘』衝撃の結末を徹底考察!寺島進×Sabuの傑作
『弾丸ランナー』や『POSTMAN BLUES』など、初期のSABU監督作といえば、運命に追い立てられるように走り続ける男たちのスピード感がトレードマークだった。しかし、本作『幸福の鐘 (Blessing Bell)』で描かれるのは、徹底した「静止」と「緩慢な歩み」だ。
主演を務めた寺島進は、劇中でほとんどセリフを発しない。工場を解雇され、行くあてもなく東京の街をさまよう五十嵐という男を、ただその佇まい、視線の揺らぎ、重い足取りだけで表現しきった。表情を大きく崩すこともなく、怒りを爆発させることもない。だが、その沈黙こそが雄弁に男の絶望と空虚を語る。名バイプレイヤーとして数多の映画を支えてきた寺島進が、映画俳優としての真骨頂を世界に見せつけた瞬間だった。
突如として理不尽なトラブルに巻き込まれ、見知らぬ他人の狂気に直面しながらも、ただ受け流して歩を進める主人公。その姿は、不条理文学の古典を彷彿とさせつつ、独特のオフビートなユーモアを漂わせる。極上のブラックコメディでありながら、観る者の心に深い余韻を残すヒューマンドラマへと昇華されている点に、映画作家SABUの類まれな才気が光る。