再開発に抗う渋谷の奇跡、昭和レトロが息づく隠れ家酒場の実態
酒場ライターの吉田類や居酒屋探訪家の太田和彦が長年にわたり著作や番組でその魅力を語り継いできたように、この横丁には日本の居酒屋文化の神髄が凝縮されている。客席はわずか5席から8席。肩が触れ合うどころか、奥の席に座るためには手前の客全員が一度立たなければならないほどの狭小空間だ。
この物理的な距離の近さが、他ではあり得ない独自の濃密なコミュニケーションを生み出す。隣り合わせた見知らぬ誰かと自然にグラスを交わし、肩書きも年齢も脱ぎ捨てて語り合う。酒と肴を媒介にしたこの原始的な社交場こそ、情報過多な現代人が渇望してやまない本物の温もりなのだろう。