至高の女方・七代目中村芝翫の真実、成駒屋が紡ぐ美しき芸の血脈
芝翫の芸歴を語る上で避けて通れないのが、大曲『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子、そして『隅田川』の狂女斑女の前だ。娘道成寺で見せた圧倒的な艶やかさと鐘への狂気、隅田川における我が子を失った母の底知れぬ哀傷。芝翫が舞台に立つと劇場の空気が一変し、客席は息をのんで静まり返った。
芝翫の演じる役々は、定型化された型の反復にとどまらず、古典の精神そのものを生々しく現代の観客の胸へ突き刺す力を持っていた。肉体が去った今もなお、その圧倒的な型と精神性は不滅の規範として劇界の規範であり続けている。