紫禁城追放から戦犯へ:溥儀の真実と映画が描かなかった数奇な生涯
溥儀という特異な存在を世界中の記憶に決定的に刻み込んだのは、1987年公開の映画『ラストエンペラー』に他ならない。イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督は、紫禁城でのロケを世界で初めて本格的に敢行し、圧倒的な映像美でオリエンタリズムと人間の哀歓を描き出した。
この記念碑的作品において、映像と完璧な共鳴を果たしたのが坂本龍一の音楽だ。映画音楽の枠を超え、東洋と西洋の旋律が激しく交錯するダイナミックなスコアは、世界を熱狂させた。坂本自身も満洲国を裏で操る甘粕正彦役としてスクリーンに登場し、冷徹な狂気を怪演している。
ベルトルッチの色彩感覚と坂本の重厚な音響設計は、歴史の教科書に埋もれかけていた溥儀の生涯を、普遍的な人間の悲喜劇へと昇華させた立役者といえる。