走れメロス「冒頭の激怒」はなぜ?太宰治が描いた怒りの真相と王の暴虐
『走れメロス』の冒頭は、無駄を極限まで削ぎ落とした緊迫感あふれる文体で始まります。文学ファンのみならず多くの人々が暗唱できるほどの有名フレーズですが、その直後には物語の発端となるシラクスの緊迫した状況が緻密に描かれています。
実際の冒頭全文を見てみましょう。
「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちはうぎやく)の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。」
この場面をわかりやすい現代語訳と解説で噛み砕くと、メロスの人物像が鮮明に浮かび上がってきます。メロスは政治的な野心や思想を持つ革命家ではなく、山奥の村で笛を吹きながら羊を育ててきた極めて純朴な羊飼いに過ぎません。しかし、彼は「理不尽な悪事を決して見過ごせない純粋すぎる正義感」の持ち主でした。この極端なまでの実直さが、巨大な権力を握る王への怒りへと直結していくのです。