佐渡の秘境「猿八」の正体とは?伝統の人形芝居と名窯が紡ぐ歴史
人形芝居の情熱と呼応するように、この山あいで炎を燃やし続けているのが猿八窯(さるはちがま)です。佐渡の焼き物といえば、相川金山周辺の無名異焼(むみょういやき)が広く知られていますが、猿八で営まれる陶芸はそれとは一線を画す孤高のスタイルを確立しています。
猿八窯の特徴は、集落周辺で採取される良質な粘土や山林の薪を使い、穴窯(あながま)や登り窯で長時間をかけて焼き締める点にあります。釉薬(ゆうやく)に頼りすぎず、薪の灰が器に降りかかって自然なガラス質を形成する「自然釉」や、炎の通り道が生み出す「窯変(ようへん)」による肌合いは、佐渡の山の厳しさと温もりをそのまま閉じ込めたかのような力強さを放ちます。
過度な装飾を削ぎ落とした素朴で重厚な器の数々は、全国の茶人や料理人、器愛好家から極めて高い評判を得ています。自然の循環の中で作陶を続けるその姿勢は、大量生産の時代にあって本物の手仕事の価値を静かに物語っています。