田村正和さんを支え抜いた妻の素顔と献身、語り継がれる夫婦の絆
二人の物語は、成城大学のキャンパスで静かに幕を開けた。田村正和さんより2歳年上だった矢島和枝さんは、銀座の老舗テーラーの令嬢。華やかな世界に身を置きながらも浮ついたところのない彼女の知性と落ち着きに、若き日の正和さんは強く惹かれたという。
映画会社・松竹で若手俳優として歩み始めた当時の正和さんは、偉大な父の影と自らの演技の間で激しい葛藤を抱えていた。繊細で傷つきやすかった青年の苦悩を誰よりも理解し、静かに寄り添い続けたのが和枝さんだった。約2年の交際を経て1970年に結ばれた結婚式も、派手な披露宴を避けて身内だけで厳かに執り行われた。この徹底したプライベートの守り方こそ、のちに「私生活を見せない最後のスター」と呼ばれる田村正和の原点となった。