徳川慶喜の貴重写真を徹底解剖!幕末から晩年に隠された真の素顔
幕末史における慶喜のイメージを決定づけた最も象徴的な一枚といえば、フランス皇帝ナポレオン三世から贈られた豪奢な軍服に身を包んだ立ち姿だろう。慶応2年から3年にかけて撮影されたとされるこの古写真・湿版写真は、単なる記念撮影の枠を遥かに超えた政治的プロパガンダの産物だった。
湿版写真特有の青白いコントラストの中に立つ若き将軍は、刀を腰に差す伝統的な武士の装束を脱ぎ捨て、ヨーロッパの最新式軍装を完璧に着こなしている。胸元の飾緒や金糸の刺繍、サーベルの柄に添えられた指先に至るまで、細心の計算が施されている。江戸幕府の近代化路線を諸外国と国内の反対勢力に誇示し、自らを「近代国家の元首」として演出する意図がこのワンカットに凝縮されていた。
当時の写真乾板は感度が低く、被写体は十数秒間もの間、瞬き一つせず静止し続けなければならなかった。ガラスプレートに定着した慶喜の瞳には、揺らぐ幕藩体制の舵取りを担わされた青年の張り詰めた緊張感と、底知れぬ胆力が宿っている。