「生きろ そ な た は 美しい」『もののけ姫』名コピーの真意
1997年の公開に先立ち、コピーライターの糸井重里と宮崎駿監督との間で行われた壮絶なやり取りは、日本の広告史・映画史における伝説となっている。当時、宮崎監督が手掛けたファンタジー時代劇の画期的なスケール感に対し、作品の「真のテーマ」を一行で表現することは極めて難航した。
糸井重里が提示した初期案には、「おそろしいか」「生き損ねた者たち」といった、より直接的でダークな言葉が並んでいた。しかし、宮崎駿監督はそれらを首を縦に振らず却下し続けたという。映画が描こうとしているのは、単純な正義と悪の対立でも、安易な環境保護の説教でもない。絶望的な世界の渦中で、それでも「生きる」ことそのものを肯定する切実さだったからだ。数十回におよぶ推敲の果てに到達したのが、あの削ぎ落とされた一行だった。