グリコ森永事件の犯人像に迫る!かい人21面相の正体と深まる謎
すべての発端は、江崎グリコ株式会社の社長であった江崎勝久が自宅の風呂場から覆面の男たちに急襲され、裸のまま連れ去られた前代未聞の誘拐事件だった。社長自身は自力で脱出に成功したものの、それは狂気と知略が入り混じる長い闘争の序章に過ぎなかった。
犯行グループは自らを「かい人21面相」と名乗り、警察や新聞各社へ独特の関西弁による挑戦状を次々と送りつけた。標的は江崎グリコにとどまらず、森永製菓株式会社、ハウス食品、丸大食品といった名だたる企業へと拡大していく。工場の放火、金銭要求、そしてスーパーの棚に仕掛けられた「どく入り きけん たべたら しぬで」の札。日本の食品・菓子製造業はサプライチェーンの根底を揺るがされ、店頭から商品が撤去される異例の事態へ追い込まれた。
不特定多数の消費者を人質に取り、マスメディアを通じて大衆を観客に仕立て上げる手口は、日本における劇場型犯罪の決定的な転換点となった。警察を「アホ」と罵り、捜査網を嘲弄する劇場型の演出は、恐怖と同時に奇妙な大衆的関心を集めてしまうという歪な社会状況を作り出したのである。