戦火の現場が突きつける人道の真義と「正義」との決定的な違い
歴史を遡れば、近代人道思想の源流には一人のスイス人実業家の衝撃があった。ソルフェリーノの戦場で倒れた兵士たちの凄惨な苦しみを目撃したアンリ・デュナン。彼が提唱した「苦痛のあるところ、敵味方の区別なく救護する」という思想は、後の赤十字国際委員会の創設へと結実した。
彼らが打ち立てた「中立」「不偏」「独立」の原則は、戦時下における法の支配としての国際人道法へと昇華した。銃声が響き渡る戦場において、赤十字の標識だけが流血を止める唯一の盾となった。だが、国家や非国家武装勢力がルールを無視し、病院や救急車を標的にする現代のハイブリッド戦争下において、この不偏不党の原則を守り抜くことの難しさは極限に達している。