甘美な女性像の裏に潜む波乱の素顔!東郷青児が遺した名画の真実
帰国後の彼を待ち受けていたのは、絵画以上にスキャンダラスな私生活だった。1929年、情婦との服毒自殺未遂事件を起こし、日本中を騒然とさせる。生死の境をさまよったこの事件は、彼の芸術に決定的な影を落とした。
傷心の彼のもとに飛び込んできたのが、作家の宇野千代である。ふたりはたちまち同棲生活に入り、互いの創作意欲を刺激し合った。宇野は彼との濃密な日々を小説に昇華し、画家もまた女性の官能と儚さをカンヴァスに定着させていく。破滅の淵を覗き見た者だけが放つ背徳的な色香が、作品に類まれな奥行きを与えたことは間違いない。愛に傷つき、死の誘惑をくぐり抜けた経験こそが、冷ややかな美の原動力となった。