藤井聡太を育てた杉本昌隆八段の勝負哲学と知られざる盤上秘話
杉本自身のキャリアを語る上で欠かせないのが、伝統ある名人戦・順位戦における戦いぶりだ。50代を迎えてなおB級への昇級を果たすなど、ベテランと呼ばれる年齢に達しても第一線で白星を積み上げる姿は、多くの棋士に勇気を与えた。AI全盛の現代、序盤の研究量は膨大化し、若手の瞬発力が際立つ中で、長年培った大局観と粘り強い受けで対抗する。
最高峰のタイトルである竜王戦や名人戦の舞台で弟子が繰り広げる極限の攻防を、杉本は常にプロの視座から精緻に分析してきた。AIの推奨手を超えた人間の感性、プレッシャーのかかる終盤で見せる勝負勘。激変する現代将棋の潮流を受け止めつつ、自らの将棋にも最新の知見を貪欲に取り入れる姿勢は、今なお衰えを知らない。