千と千尋の神隠しの舞台は九份?公式否定から始まった噂の真相と今
なぜ事実とは異なる噂が、あたかも公認であるかのように定着してしまったのか。その発端を紐解く経緯解説として欠かせないのが、2000年代初頭のメディア環境と観光プロモーションの存在だ。
2001年の映画公開以降、日本のテレビ番組や旅行情報誌はこぞって九份の「阿妹茶樓(あめいちゃろう)」周辺を取り上げ、「千尋の世界そのまま」と紹介した。赤提灯が灯る幻想的な夜景、湯婆婆の湯屋を思わせる木造多層建築、そして狭い路地に漂う湯気。それらの要素があまりにも作品のイメージと合致していたため、視聴者や読者の間で「モデル地に違いない」という確信が急速に形成されていった。
これに対し、当時の観光誘致側も積極的な否定を行わなかった。日本人観光客の急増は現地の経済に莫大な恩恵をもたらしたため、ある種の「暗黙の了解」としてイメージが固定化されていった側面は否定できない。言葉の独り歩きがインターネットの普及とともに加速し、事実関係の検証が置き去りにされた典型例といえる。