譲渡とは?売買・贈与との決定的な違いと税金の落とし穴をプロが徹底解説
企業の買収や事業再編の現場では、「事業譲渡」と「株式譲渡」という2つの手法が頻繁に活用されます。それぞれ法的性格や手続き、税務上の扱いが根本から異なるため、目的に応じた選択が求められます。
まず、事業譲渡のメリット・デメリットを比較すると、買い手側の最大のメリットは「引き継ぎたい事業用資産や取引先、優秀な従業員を選別して取得できる点」にあります。簿外債務や不要な負債を切り離せる安全性がある一方、デメリットとして「資産、契約、許認可などの移転手続きを個別に結び直す膨大な手間」が発生します。また、譲渡対象となる資産に対して消費税が課税される点も見落とせません。
対して、中小企業のM&Aで主流となっているのが株式譲渡の手続きです。株主が保有する株式を買い手に売却して経営権を移転させる手法で、会社そのものを丸ごと引き継ぐため、個別の契約を結び直す必要がありません。ただし、日本の未上場企業の多くは定款で譲渡制限株式の発行を定めています。そのため、株主総会や取締役会での承認決議、譲渡承認請求、株式譲渡契約(SPA)の締結、株主名簿の書換請求といった厳格な法定ステップを踏む必要があります。
実務で最も議論が白熱するのが譲渡対価の決め方です。対象企業の時価純資産に営業権(のれん代)を加算する「コストアプローチ(時価純資産法)」、将来生み出すフリーキャッシュフローを現在価値に割り引く「インカムアプローチ(DCF法)」、類似上場企業の財務指標を参考にする「マーケットアプローチ(マルチプル法)」などを組み合わせ、客観的な企業価値を算定した上で最終価格が決定されます。