乳頭温泉郷の最高峰、至高の白濁湯と本陣宿泊の極意を徹底取材
秘湯と呼ばれる温泉地は全国に数あれど、ここほどの江戸情景をそのまま保ち続けている場所は極めて珍しい。かつて警備の武士が詰めていたとされる「本陣」は、文政年間に建てられた歴史的建造物だ。黒光りする太い梁、囲炉裏から漂う木の煙の匂い。夜になればランプの灯火がほんのりと茅葺き屋根を照らし出し、水墨画のような世界を現実に出現させる。
乳頭温泉郷組合の加盟宿の中でも最古の歴史を誇るこの場所は、単なる宿泊施設にとどまらない。生きている文化財そのものだ。客室に刻まれた柱の傷や擦り切れた敷居の一つひとつに、数百年もの間、傷ついた体や心を癒やしに訪れた湯治客の思いが静かに宿っている。