生き仏と呼ばれた阿闍梨たち!過酷な千日回峰行の歴代達成者と全記録
千日回峰行と一口に言っても、日本の信仰世界には二つの頂が存在する。一つは平安仏教の母山である天台宗・比叡山延暦寺に伝わる回峰行、そしてもう一つは修験道の総本山として名高い奈良の金峯山寺(大峯山)に伝わる大峯千日回峰行だ。
比叡山の回峰行は、平安時代に相応和尚が開創したとされ、比叡の峰々や谷、京都の街中にある約300箇所もの霊場を巡拝しながら礼拝を繰り返す。自らが仏になるのではなく、山川草木すべての命の中に仏性を見出し、祈りを捧げるのが天台密教の教えだ。
対する金峯山寺の回峰行は、役行者(えんのぎょうじゃ)を開祖とする修験道の実践である。吉野の蔵王堂から標高1719メートルの大峯山上ヶ岳本堂まで、往復48キロ・標高差1300メートルの峻険な山道を一日で踏破する。気象条件が許す5月から9月にかけて毎日登下山を繰り返すその行程は、文字通り一歩踏み外せば谷底へ転落する断崖絶壁との戦いだ。
どちらの霊場においても、行の根底にあるのは「自他一如」の精神である。自分自身を極限まで削ぎ落とし、すべての衆生の苦しみを行者自身が背負い込んで歩く。その壮絶な覚悟こそが、回峰行の神髄といえる。