石川さゆり『天城越え』歌詞の真実!吉岡治が描いた狂気と情念
稀代の作詞家・吉岡治が『天城越え』に注ぎ込んだのは、単なる男女の道行(みちゆき)ではない。ここに描かれているのは、他者に奪われるくらいなら愛する者を自らの手で葬り去りたいという、狂気すれすれの絶対的な愛の独占欲だ。石川さゆりという類まれな表現者を得た吉岡は、女性の内面に渦巻くタブー視されがちな感情を容赦なくえぐり出した。
「寝乱れて」「隠しきれない 移り香」という生々しい官能の描写から始まり、物語は一気に破滅への傾斜を転がり落ちていく。吉岡治の筆致は冷徹でありながら、触れれば火傷しそうなほど熱い。男への不信と激しい渇望が綯い交ぜになり、自己破壊的な覚悟へと昇華していく心理描写は、流行歌の枠を完全に踏み越えている。聴き手が戦慄を覚えるのは、自分自身の心の奥底にも眠っているかもしれない醜悪で美しい本能を、この歌詞が容赦なく暴き立てるからに他ならない。