わずか2ミリグラムで命を奪う粉末、日本へ迫る最悪の薬物危機
致死性と依存性の凄まじさにおいて、この物質の右に出るものは存在しない。鎮痛効果および毒性はモルヒネの約50倍、ヘロインの約100倍に達する。脳内のオピオイド受容体に瞬時に結合すると、激しい多幸感をもたらすと同時に、人間が無意識に行っている呼吸反射を強制的に遮断してしまう。過剰摂取に陥った者は、苦痛を訴える暇すらなく、数分でチアノーゼを起こして昏睡に至る。
乱用の実態はさらに陰湿だ。街頭で出回る錠剤は、一見すると正規の鎮痛薬や抗不安薬と見分けがつかない偽造ピルとして流通している。密売人が利益をかさ増しするため、粗悪な賦形剤にフェンタニルを混ぜてプレス機で固めているのだ。均一に混ざり合っていないため、1錠の中に致死量を超える成分が偏在する「ホットスポット」が生じる。知らずに睡眠薬感覚で口にした一般人が、たった一錠で帰らぬ人となる事例が後を絶たない。